
上陸特別許可 とは、上陸拒否事由に該当する外国人でも、法務大臣が相当と認める場合に上陸を許可する制度です。入管法は基本的に外国人の上陸を制限していますが、特例として上陸を認める場合があります。
外国人が日本に上陸する際には、必ず空港または海港で上陸審査を受けて上陸許可を得る必要があります。上陸許可の要件は大きく分けて以下の4つです(入管法第7条第1項)。
有効な旅券を持っていること
有効な査証(ビザ)を持っていること
入管法に定める在留資格に該当する活動を行うこと
上陸拒否事由に該当しないこと
犯罪歴がある: 過去に重大な犯罪を犯している場合。
健康上のリスク: 感染症のリスクがある場合。
反社会的活動: 違法薬物の所持や売春に関与した場合。
入管法第7条第1項第4号 入国審査官は、前条第2項の申請があったときは、当該外国人が次の各号に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。 四 当該外国人が第5条第1項各号のいずれにも該当しないこと
入管法第5条第1項第9号ロ 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。 九 次のイからニまでに掲げる者で、それぞれ当該イからニまでに定める期間を経過していないもの ロ 第二十四条各号のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者で、その退去の日から5年経過していない者
もっとも、上陸拒否事由に該当する場合でも、法務大臣が相当と認める場合には、上陸を許可することができます。法務大臣の裁決の特例として、入管法では以下のように定められています。
入管法第12条第1項 法務大臣は、前条第3項の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該外国人が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の上陸を特別に許可することができる。 一 再入国の許可を受けているとき。 二 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入ったものであるとき。 三 その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。
実務上、上陸特別許可が認められるケースには限定的な運用がされています。以下の基準に基づいて許可が判断されます。
日本人、特別永住者、永住者、定住者と法的に婚姻が成立しており、婚姻の信憑性が立証されていること。
在留資格認定証明書交付時において、婚姻後1年以上が経過していること。
在留資格認定証明書交付時において、退去強制後2年以上経過していること。
執行猶予付き有罪判決を受けた後に退去強制された場合、執行猶予期間をおおむね経過していること。
上陸特別許可は、日本に上陸する外国人に対して厳格な審査を行う一方で、特別な事情がある場合に限り、柔軟に対応するための制度です。法務大臣の裁量により、個別の事案で救済が図られることがあります。