
企業グローバル展開の中で、海外子会社や現地法人の優秀な人材を日本の事業所に転勤させる「企業内転勤」という在留資格が注目されています。本記事では、企業内転勤の制度概要や活用シーン、メリット、在留資格該当性および上陸許可基準について詳しく解説します。
企業内転勤の在留資格は、以下のようなケースで運用されます。
海外現地法人から日本法人へ 海外の現地法人に在籍する外国人社員を、日本の事業所へ一定期間出向させるケース。
海外本社から日本支社へ 海外の本社・親会社から、直接日本支社や子会社に転勤させる場合。
新設事業所への出向 日本に新たに設立した子会社や支店等の営業所に、海外の本社から人材を派遣するパターン。
この在留資格では、転勤前に1年以上の勤務実績が求められるほか、期間を限定して日本国内で業務を行うことが前提となっています。なお、同様の仕事内容に関しては「技術・人文知識・国際業務」との重複部分もありますが、企業内転勤は学歴や実務経験の厳しい要件が課されない点が大きな特徴です。
企業内転勤制度を活用することで、以下のようなメリットが得られます。
確実な人材確保 日本で新規に外国人を採用する手間を省き、すでに海外拠点で実績のある優秀な人材を適材適所に活用できます。
事業スキームの柔軟性 日本で受注した業務を、海外子会社に発注するなど、内外の連携体制の中で効果的な業務運営が可能に。海外の専門性を日本市場に反映させた取り組みが実現します。
採用要件の緩和 「技術・人文知識・国際業務」で要求される学歴や実務経験が不要なため、海外拠点での就業実績があれば、日本での転勤が比較的スムーズに進む可能性があります。
このように、企業内転勤制度はグローバル人材の日本での活用と事業戦略を両立させるための有力な手段として、多くの企業に活用されています。
企業内転勤の在留資格は、入管法別表第1の2に基づき、「本邦に本店、支店その他の事業所を有する公私の機関の外国にある事業所の職員が、期間を定めて日本に転勤し、そこで業務を行う」ことが認められています。
対象組織
法人、国、自治体、独立行政法人、公益法人などの「公私の機関」が該当。
海外企業であっても、日本に事業所がある場合は条件をクリアします。
転勤の範囲
同一企業内だけでなく、系列会社間(親会社・子会社、グループ企業間)の出向も含む。ただし、資本関係や連携が明確であることが必要です。
勤務期間の限定
日本国内での勤務は「期間を定めて」行われなければなりません。無期限の常駐は認められず、あくまで期間限定の出向となります。
この制度は、転勤前後の業務内容が必ずしも同一・関連でなくても申請可能ですが、業務の関連性が認められる場合は、申請の説得力が高まる傾向にあります。
企業内転勤の在留資格を取得するための上陸許可基準として、主に以下の要件が設けられています。
転勤直前まで、外国本社(または現地法人)で1年以上の勤務歴があること。途中で他の転勤により途切れていても、日本での勤務期間と合算し1年以上であれば可。
日本で業務を行う場合、日本人と同等以上の報酬が支払われる体制があること。報酬については、支払主体が海外企業、日本事業所、またはその合算でも認められます。
「技術・人文知識・国際業務」とは異なり、学歴や実務経験の厳密な要件は設けられていません。
上陸許可基準は、申請者が企業内転勤としての適格性を持つことを確認するものであり、これらの要件を満たすことが認められれば、在留資格が付与され、日本国内で限定期間の業務に従事することが可能となります。
企業内転勤在留資格を申請する際は、以下の点に留意することが重要です。
転勤期間の明確化 日本国内での勤務期間は必ず限定期間である必要があります。長期的な常駐を希望する場合は、他の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)との比較検討が求められます。
関連性のある業務内容の説明 転勤前後の業務内容が必ずしも同一でなくても良いものの、業務に一定の関連性が認められると、当該外国人がなぜ日本での出向が必要なのかが明確になり、申請の説得力が向上します。
報酬水準の適正設定 日本人社員と同等以上の報酬体制が整っていることは、申請審査での大きなプラス要素となります。報酬体系の整備は、事前に十分な社内調整が必要です。
書類の準備と専門家への相談 要件を正確に満たし、かつ合理的な転勤計画として説明するためには、詳細な書類作成が不可欠です。行政書士などの専門家と連携することで、申請成功率を高めることが期待できます。
企業内転勤の概要 海外拠点の優秀な人材を日本の事業所に期間限定で転勤させる在留資格制度です。海外の本社や現地法人との連携体制が前提となります。
制度のメリット 新規採用の手間を省き、既に実績のある人材を戦略的に活用できるほか、学歴や実務要件に縛られず柔軟に人材移動が可能です。
在留資格該当性と上陸許可基準 出向前の勤務実績(1年以上)、日本人と同等以上の報酬、期限付きの出向といった明確な基準が設けられており、条件を満たせば在留資格の取得が可能です。
成功のためのポイント 転勤期間や業務内容の明示、報酬体制の整備といった基本要件を押さえることが大切です。また、専門家のアドバイスを受けることで手続きの正確性と申請成功の可能性が向上します。
企業グローバル化の進展とともに、優秀な外国人人材を日本で有効活用するための手段として「企業内転勤」の在留資格は今後も注目されるでしょう。制度の趣旨や細かな要件を十分に理解し、適切な転勤計画と書類準備を進めることが、申請成功のカギとなります。
この他にも、実際の事例や申請手続きの詳細についてさらに知りたい場合は、専門の行政書士事務所にご相談いただくことをお勧めします。最新の法改正動向や具体的な業務連携のノウハウについても、引き続き情報発信してまいります。