
行政書士事務所の視点から、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下「技術人文知識国際業務ビザ」)の特徴、その在留期間、従事可能な業務内容、そして取得に必要な許可要件について詳しく解説します。日本での就労を目指す外国人の方にとって、最も利用される就労ビザのひとつである本ビザのポイントを整理し、実務で役立つ情報をお届けします。
技術人文知識国際業務ビザは、外国人が日本で専門的な知識や技術を活かして働くために発給される就労ビザの一種です。
専門性の重視 本ビザは、技術、文科、国際性―それぞれの領域で高い専門性を求められる業務に従事できる点が大きな特徴です。
技術分野: システムエンジニア、開発・設計技術者、研究職など、理系の専門知識を基盤とする仕事。
人文知識分野: 営業、マーケティング、経営企画、財務・経理など、文系の専門性が求められる業務。
国際業務分野: 通訳、翻訳、英会話講師、貿易実務、デザイナーなど、外国文化や感受性が関与する仕事。
なお、このビザでは、単純な労働(例:飲食業や小売業の接客、工場ライン作業、建設現場作業など)で就労することは認められていません。
技術人文知識国際業務ビザの在留期間は、以下のように段階的に設定されます。通常、初回取得時は1年が多く、更新を重ねることで3年、5年と延長されるケースが一般的です。
3か月
1年(初回取得時がほとんど)
3年
5年
利用者の在留状況や業務内容の安定が確認されれば、より長期間の在留が認められる傾向にあります。
本ビザでは、各分野別に「専門性を求められる業務」に従事することが認められています。適用される具体例は以下の通りです。
技術分野システムエンジニア、開発・設計技術者、研究職
人文知識分野営業、マーケティング、経営企画、財務・経理
国際業務分野通訳、翻訳、英会話講師、貿易実務、デザイナー
各業務においては、単なる労働力としてではなく、学歴や実務経験に裏付けられた「専門知識や技術」を発揮することが求められるため、申請にあたってはその証明が重要となります。
ビザ申請が認められるためには、下記の6点の要件をクリアする必要があります。各要件について、具体的なポイントを確認しましょう。
学歴の場合: 大学、大学院、短大の卒業証明書が有効です(国内外問わず)。また、日本の専門学校においては専門士の取得が必要となります。
実務経験の場合: 原則としては10年の実務経験が求められますが、国際業務分野に限っては3年の実務経験で代替できるケースもあります。 ※ 在職証明書の提出が必須となり、転職歴が多い場合は証明書の整備が難しくなる点に注意。
学歴との連動: 卒業証明書や成績証明書の履修内容と、申請する業務内容の間に明確な関連性が求められます。
実務経験の場合: 在職証明や業務実績を示し、これまでの経験と申請業務が整合性を持っている点を説明する必要があります。
申請者と日本国内の公私の機関(法人や、日本国内に事業所を持つ個人)が、継続的な雇用契約を締結していることが必須です。契約内容には労働条件や業務継続性が明示される必要があります。
申請先の企業が安定した経営状態にあることも重要な要件です。
必要書類: 決算書や事業計画書が提出され、会社の将来性や安定性が審査されます。
注意点: 赤字体質の場合でも、専門家の鑑定書や詳細な事業計画書を用意できれば許可される可能性もあります。
外国人であることを理由に、日本人と比べて報酬を低く設定してはならず、同一業務に対しては同等以上の給付が求められます。手当は基本給には含まれず、労働の対価としての報酬全体が評価対象となります。
過去に刑事罰を受けた記録や、交通違反など、法律違反歴がないことが前提となります。オーバーステイや過剰労働が指摘されると、審査に不利になる可能性もあるため、反省文の提出を求められる場合もあります。
学歴または実務経験要件
卒業証明書または在職証明書が必要。国際業務は3年、その他は10年が目安。
仕事内容との関連性
学歴や実務経験と申請業務の整合性が求められる。
雇用契約の存在
日本国内の事業者と継続性のある契約が締結されていること。
会社の継続性・安定性
決算書、事業計画書、または専門鑑定書の提出で証明。
日本人と同等以上の報酬
同一業務を行う日本人社員と同等以上の給与水準を確保すること。
素行善良
前科、違反歴なし。必要に応じ反省文の提出も。
本記事では、技術人文知識国際業務ビザの特徴、在留期間、従事可能な業務、そして取得のために必須となる6つの許可要件について詳しく解説しました。
専門性がカギ 技術、文科、国際業務それぞれの分野で求められる専門知識や技術を背景に、ビザ発給の根拠となります。
在留期間の柔軟性 初回は短期間(1年)が基本ですが、更新により3年・5年と長期在留が可能となるケースもあるため、実績の積み重ねが重要です。
厳格な許可要件 学歴や実務経験、雇用契約、会社の安定性、報酬条件、そして素行善良という6点の要件を総合的に判断されます。そのため、事前準備と証明書類の充実が不可欠です。
日本でのキャリアを真剣に考えるなら、各要件を十分に把握した上で、専門家(行政書士など)に相談しながら申請手続きを進めることが成功への近道となります。今後も最新の法改正情報や実務のコツについて、継続して情報発信していく予定ですので、ぜひ引き続きチェックしてください。
行政書士江坂国際法務事務所