
企業が海外の支店、工場、あるいは関連会社から専門技術者などを呼び寄せる場合、在留資格の選択は事業戦略に直結します。本記事では、海外人材の呼び寄せに最適な在留資格として注目される企業内転勤ビザと、そのフレキシブルな存在である技術・人文知識・国際業務ビザとの違いを詳しく解説します。行政書士の視点から、各制度のメリット・デメリットや申請要件、さらには企業がどちらを選ぶべきかを比較していきます。
企業内転勤ビザは、海外の本社や関連会社に実績のある外国人を呼び寄せ、一定期間日本の事業所でその専門技術や経験を発揮してもらうための在留資格です。
具体的なケース
海外にある関連会社から日本法人に出向する外国人
海外本社から日本支社へ転勤する外国人
日本国内に新たに設立した子会社・支店へ海外本社が出向するケース
実績ある人材の活用
既に自社グループで実績を積んだ人材を呼び寄せることで、企業の信頼性と事業展開の確実性を高めることができます。
採用リスクの低減
新たに採用する場合に比べ、不確定要素や採用後のミスマッチが少ないため、迅速に業務に着手できるのが大きな利点です。
学歴・実務経験の不要性
技術・人文知識・国際業務と比較して、個人の学歴や実務経験に関する制約がないため、取得のハードルが相対的に低いと言えます。
必要書類の増加
一方で、日本法人と海外法人との関係性を証明する資料の提出が求められるため、書類の準備や審査期間は若干長くなる可能性があります。
技術・人文知識・国際業務ビザは、外国人が日本で専門知識を活かして就労するための代表的な就労ビザです。
専門性の証明が必須 学歴や実務経験、業務内容との関連性を証明する必要があり、分野ごとに定められた基準を満たすことが求められます。
技術: システムエンジニア、開発・設計、研究職など
人文知識: 営業、マーケティング、財務、経理など
国際業務: 通訳、翻訳、貿易実務、英会話講師など
融通性の高さ
在留資格が無期限で更新可能な点や、転職が可能という点で、個人のキャリア形成や柔軟な就業形態に対応できます。
申請要件の厳格さ
一方で、学歴・実務経験の証明、雇用契約や報酬の水準など、審査基準が厳しく定められており、企業側も個人側も十分な証明書類と準備が必要です。
企業が採用する在留資格は、それぞれのメリットや取得条件を踏まえ、企業の方針や人材戦略によって選択されます。以下の表は、主要な違いを視覚的にまとめたものです。
項目 | 企業内転勤 | 技・人・国 |
---|---|---|
雇用期間 | あらかじめ一定の期間を定める | 無制限 |
勤務先 | 転勤先の特定の事業所に限定 | 無制限 |
学歴・実務経験要件 | なし | あり |
期間制限 | 直前1年以上の制限 | 無制限 |
報酬の支払い | 海外からも支払い可能 | 日本からのみ支払い可能 |
自社の人材戦略
自社グループ内での人材移動や既存の実績を重視する場合は、企業内転勤ビザが最適です。
柔軟な就業環境
長期間にわたったキャリア形成や、転職の自由度を望む場合、技術・人文知識・国際業務ビザが有利となります。
本記事では、企業が海外から専門技術者や経験豊富な人材を呼び寄せる際に活用される企業内転勤ビザと、より広範な就労用途に対応する技術・人文知識・国際業務ビザの違いを詳しく解説しました。
企業内転勤ビザは、
グループ内で実績を持つ人材を一定期間呼び寄せ、企業戦略に沿った業務に従事させるのに適しています。
学歴・実務経験の証明が不要な一方、日本法人と海外法人との関係を明確に証明する書類の準備が必要です。
技術・人文知識・国際業務ビザは、
専門性を活かし、長期間にわたって日本で就労することが可能な柔軟な制度です。
出願には高度な証明書類が求められ、企業側も個々の能力や契約内容に細心の注意が必要です。
各ケースのメリット・デメリットを理解した上で、企業の方針や人材の具体的な状況に合わせて最適な在留資格を選択することが重要です。今後も行政書士事務所として、最新の在留資格情報と実務のヒントを提供してまいります。
この他、就労ビザの各種手続きの流れや、申請に際しての注意点、そして最新の法改正情報など、さらに深掘りした内容も順次解説予定です。海外人材採用や在留資格申請に関するご質問があれば、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。