
就労ビザを取得する際、入国管理局が審査する重要な書類のひとつが雇用契約書です。そこで、日本の労働基準法に沿みながら、在留資格の要件―特に日本人と同等以上の報酬水準や明確な職務内容―が盛り込まれていることが求められます。以下では、契約書に記載すべき主要な項目や注意点を詳解します。
【法令上、書面で必ず明示する必要がある項目】
契約当事者
会社(または法人)名と従業員の氏名、住所など、契約締結者の基本情報を記載。
労働契約の期間
正社員や契約社員などの契約形態
契約期間の満了時期、更新の有無および更新条件 ※在留資格の性質に応じ、一定期間限定となる場合はその旨も明示します。
従事する業務
在留資格で認められる業務内容を明確に記載(例:技術・人文知識・国際業務であれば、その専門分野に関する具体的な職務内容)
就業場所
実際に業務を行う場所※在留資格の範囲内にあることを確認する
始業・終業の時刻
就業開始・終了時刻、休憩時間などの労働時間について明記
時間外労働の有無
残業の有無、及び残業手当の支給基準について記載
休日休暇に関する事項
週休・年次有給休暇、その他の休日に関するルール
賃金額、計算方法、支払い方法および締切日
支払われる賃金の具体的金額、手当(ただし基本給に含まれない)
日本人労働者と同等以上の報酬水準であることを明記
支払い方法(振込・現金など)と月ごとの締め日
退職に関する事項
在留資格の更新が認められなかった場合など、退職または契約解除に関する条項 ※特に、在留資格の更新条件が満たされない場合の解除条項を明示しておくことが重要です。
その他必要に応じた事項
契約の履行状況や変更条件など、企業・労働者双方の合意内容に基づく事項
※雇用契約書の配布以外、口頭説明や就業規則などで明示しても問題ありません。
昇給に関する事項
昇給の基準、時期、方法など、別途就業規則で詳細を定める場合は、その旨を周知。
※雇用契約書配布の他、別途就業規則や社内規程として設けられている場合もあります。
退職金の支払い規定 - 支給の有無、適用範囲、計算方法、支払方法、支払い時期など
臨時的な賃金(慶弔金、賞与、最低賃金)に関する事項
労働者の費用負担事項 - 食費、作業用品、その他の費用負担ルールなど
安全衛生、職業訓練、災害補償、および業務外の疾病扶助
表彰や制裁に関する規定、休職制度など
雇用契約書を作成するタイミングでは、まだ就労ビザ(例:技術・人文知識・国際業務ビザ)の許可が下りていない場合が多く、就労可能な在留資格の取得を条件とする停止条件付き雇用契約として締結することが一般的です。 例) 「本契約は、外国人従業員が就労可能な在留資格を取得することを条件として、その効力を生じるものとする」
雇用契約書の提出が困難な場合、入国管理局は労働条件通知書により、業務内容、給与、雇用期間等が明示されている書類であれば、就労ビザ申請の代替として認めるケースもあります。
就労ビザ取得のための雇用契約書は、労働基準法に基づいた労働条件の明示と、在留資格取得要件である日本人と同等以上の賃金および職務内容の明確化が必須です。
必須項目として、契約当事者、契約期間、業務内容、就業場所、労働時間、賃金、休日休暇、退職条件などが挙げられます。
追加情報として、昇給規定や退職金、各種手当、労働者負担事項、安全衛生規定なども、必要に応じて説明・明示することで、入国管理局への説得力が高まります。
また、就労ビザの許可前に締結する場合は、停止条件付きの契約で雇用契約の効力を確保する措置が求められ、労働条件通知書で補完するケースもあります。
このように、雇用契約書は外国人労働者を雇用する際の重要な法的根拠となるとともに、入国管理局の審査にも大きな影響を与えます。企業としては、必要な証明書類や各種規定を十分に整え、専門家(行政書士や弁護士など)の助言を得ながら契約内容を策定することが、スムーズな就労ビザ取得と安定した労務管理につながります。
さらに、海外人材の採用・在留資格取得に関する最新情報や具体例、各種申請手続きの流れなども当事務所では随時情報提供しておりますので、詳しいご相談やお見積りはお気軽にお問い合わせください。