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同性婚パートナーの在留ビザ取得と特定活動ビザの可能性
目次
はじめに
日本で働く外国人労働者が家族とともに暮らすために必要なビザとしては、主に日本人の配偶者の場合は「日本人の配偶者等ビザ」、就労ビザを持つ外国人の配偶者の場合は「家族滞在ビザ」があります。しかし、日本では同性婚は法的に認められていないため、同性婚をしたパートナーは、これらの在留資格の対象とはならず、別の在留資格の取得が必要となります。
本記事では、同性婚のパートナーが日本で滞在するために取得できる可能性のある「特定活動ビザ」について、制度の背景や入管の見解、具体的な取得要件や事例を解説します。今後、法改正や裁判例の動向にも注目が集まる中、実務で対応を検討する方にとって有益な情報となるでしょう。
同性婚と日本の制度背景
同性婚とは、男性と女性ではなく、同じ性別同士が結婚することを意味します。近年、LGBTなど性的マイノリティの人権や婚姻の在り方が国際的に注目されるようになり、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、台湾など30カ国以上で同性婚が認められています。しかし、日本では依然として法的な同性婚は認められておらず、地方自治体が締結するパートナーシップ協定はあくまで民間的な効力にとどまっています。
フランスなどでは、民事契約を通じて同性婚パートナーに法律上の地位を与える制度が整っており、日本でも同様の仕組みを導入する議論があるものの、現状では国の制度としては実現していません。
入管の見解と在留資格の扱い
法務省出入国在留管理局は、在留資格「家族滞在」や「永住者の配偶者等」における「配偶者」の定義について、日本の婚姻法に基づく有効な婚姻関係と解釈しており、外国で有効に成立した同性婚は原則として対象外としています。つまり、日本人または就労ビザを持つ外国人との同性婚の場合、従来の配偶者ビザや家族滞在ビザは適用されません。
一方で、通知文書では、外国人同士の同性婚に関しては、本国で有効に婚姻が成立している場合、扶養関係が認められるならば、在留資格「特定活動」に基づく在留が認められる可能性が示されています。近年の判例や訴訟の動きから、日本人と外国人の同性婚についても、将来的に特定活動ビザの付与が検討される可能性があるとされています。
特定活動ビザによる在留の可能性
同性婚のパートナーに対しては、上記の通知の趣旨から、在留資格として「特定活動ビザ」が考えられます。特定活動ビザは、通常の在留資格申請とは異なる告示外の取り扱いとなるため、新規で在留資格認定証明書交付申請での申請はできず、まずは留学ビザや短期ビザなどを取得した後に在留資格の変更申請を行う必要があります。
具体例として、カナダ国籍で日本の永住権を有する外国人が、フランス国籍のパートナーと各国で有効な婚姻を成立させた場合、フランス国籍のパートナーに特定活動ビザが与えられる可能性があります。なお、外国人と日本人の同性婚については、日本国内で有効な婚姻関係として認められないため、特定活動ビザの付与が難しいという現状もありますが、最近の裁判例では法の下の平等を根拠に見直しが求められる動きも見られます。
特定活動ビザ取得の要件
特定活動ビザの取得要件は明確な法令上の規定が存在しないため、実務上は申請の経験や内々の運用に依存しています。一般的に考えられる要件は以下のとおりです。
- 双方の外国人同士の同性婚が、本国で有効に成立していること
- 日本での婚姻生活や同居が可能なだけの経済力があること
- 二人の関係性に偽装性がなく、実体のあるパートナーシップであること(出会いの経緯、連絡頻度、写真やメッセージなどの証拠によって裏付けが求められる)
また、申請手続きとしては、初めに他の在留資格で入国し、その後在留資格変更申請を行うケースが多く、手続きの際は詳細な証拠書類の提出が必要となります。申請内容が認められれば、一定期間の特定活動ビザが発給される可能性がありますが、労働や生活基盤に関する制約が厳しく運用される点にも留意が必要です。
まとめ
日本における在留資格の枠組みでは、従来の配偶者ビザや家族滞在ビザは、同性婚が法的に認められていないため対象外となります。しかし、近年の国際情勢や判例から、外国人同士の同性婚に関しては、人道的配慮の観点から在留資格「特定活動」での対応が可能とされるケースが出ています。実際、特定活動ビザを通じて、国ごとに有効な婚姻関係が証明され、実体のあるパートナーシップが認められる場合には、在留が認められる可能性があります。
行政書士としては、こうした最新の運用状況や判例、入管当局の通知を正確に把握し、依頼者それぞれの事情に合わせたアドバイスと申請支援を行うことが重要です。今後の法改正や裁判例の動向も注視しながら、適正な在留資格の取得に向けた手続きのサポートを進めていくことが求められます。
行政書士江坂国際法務事務所