永住許可や帰化許可も取消対象か?

永住許可について

 

現行法上の取消事由

 

現在の日本の法律では、在留資格「永住者」について、以下のような取消事由が定められています。

 

新住居地の届出をしなかった場合や虚偽の住居地を届けた場合 新しい住居地を届け出なかったり、虚偽の住居地を届けた場合は、在留資格の取消対象となります。

 

不正の手段等により永住許可を受けた場合 詐欺などの不正な手段で永住許可を取得した場合も、取消しの対象となります。

 

1年を超える実刑に処せられた場合 1年を超える実刑判決を受けた場合も在留資格が取り消される可能性があります。

 

薬物事犯により有罪判決を受けた場合 薬物事犯で有罪判決を受けた場合も、取消しの対象となります。

 

追加された取消事由

 

2025年の改正入管法により、以下の取消事由が新たに追加されました。

 

改正入管法第22条の4第1項第8号「この法律に規定する義務を遵守せず」 法律で定められた義務のうち、罰則により担保されているものを正当な理由なく履行しなかった場合が該当します。ただし、在留カードを携帯しなかったり、在留カードの更新申請を怠った場合など、軽微な違反は含まれません。

 

改正入管法第22条の4第1項第8号「故意に公租公課の支払をしないこと」 支払能力があるにも関わらず、故意に租税や社会保険料などの公的負担金の支払いを拒む場合が該当します。ただし、病気や失業など正当な理由がある場合は取消しの対象とはなりません。

 

改正入管法第22条の4第1項第9号に規定する刑罰法令違反 窃盗、詐欺、恐喝、殺人、危険運転致死罪など、一定の重大な刑罰法令違反が含まれます。ただし、過失運転致死罪や道路交通法違反は含まれません。

 

職権による在留資格の変更

 

取消事由に該当した場合でも、直ちに在留資格が取り消されるわけではありません。悪質な場合を除き、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格に変更を許可することが可能です。多くの場合、「定住者」の在留資格が付与されると考えられます。

 

永住許可のまとめ

 

改正入管法により、永住者の在留資格取消しの条件が強化され、一部の悪質な行為を対象とする取消事由が追加されました。現行の取消事由と合わせて理解し、遵守することが求められます。また、取消事由に該当した場合でも、直ちに出国させられるわけではなく、法務大臣の判断により在留資格の変更が行われる可能性があるため、個別のケースに応じた対応が重要です。

 

帰化許可について

 

帰化の無効

 

帰化とは、国籍法に基づき法務大臣が行う行政処分の一つです。行政処分に重大かつ明白な瑕疵がある場合、その処分は「無効」となります。具体的には、以下のようなケースが該当します。

 

既に日本国籍を有する者に帰化許可処分をした場合

 

日本人になる意思が無い者に帰化許可処分をした場合

 

これらのケースは基本的には起こり得ないものの、該当する場合には帰化許可処分に重大かつ明白な瑕疵があると言えます。

 

帰化の取消

 

帰化許可処分は行政処分であるため、取消が理論上は可能です。しかし、これまでに帰化許可処分が取り消された事例は存在しません。その背景には、以下のような事情があります。

 

取消対象者が無国籍となるリスク
一度帰化許可処分が出された後に取り消すことは、申請者に多大な影響を与えるため、容易に取り消すことは避けられています。例えば、日本は二重国籍を認めていないため、帰化申請者は元の国籍を放棄することが求められています。

 

日本に帰化後、元の国籍を放棄した後に帰化許可処分が取り消されると、元の国によっては申請者が無国籍となる可能性があります。このようなリスクもあり、帰化の取消は忌避されています。

 

帰化許可のまとめ

 

帰化の取消は理論上可能ですが、実際には慎重な審査が行われており、重大な影響を考慮して取り消されることは忌避されており、前例もありません。しかしながら帰化申請時には、正確な情報を提供し、虚偽の申請を行わないよう注意が必要です。

 

行政書士江坂国際法務事務所