技能実習から就労ビザへ変更できるのか

技能実習から直接就労ビザへ変更できるのでしょうか。
本来的な制度趣旨から相反する話ですが、実際に変更が許可されたケースもあります。
今回はそこのところを深堀りして解説していきます。

 

技能実習制度の目的と背景

 

日本の技能実習制度は、入国管理局が定めた「入国・在留審査要領」の中で、以下のように説明されています。

 

「技能実習制度は、開発途上国や地域の青壮年に対し、一定期間日本で技能、技術、知識を習得させ、帰国後にその成果を自国の経済発展に活かしてもらうことにより『人づくり』に寄与する制度である。」

 

この趣旨から、制度の基本前提として「帰国」が想定されています。すなわち、技能実習ビザの下での在留は原則として一時的なものであり、永続的な雇用や長期間の滞在を前提としていないのです。しかし、現実には多くの企業が実習生の育成投資を継続雇用へとつなげたいと考えており、結果として「就労ビザ」への変更希望が高まっています

 

例外的に認められるビザ変更のケース

 

原則として、技能実習制度は「帰国」を前提としているため、在留資格の変更は厳しい基準が設けられています。しかし、以下の特殊事情が生じた場合には、例外的にビザ変更が認められる可能性があります。

 

身分関係の変化 例:日本人との結婚、出産など、家族としての結びつきが成立した場合

 

出国準備の実施中 例:帰国準備中に、実習期間延長や環境の変化により、継続雇用を希望するケース

 

技能実習ビザから各種就労ビザへの変更要件

 

技能実習生が同社で継続的に活躍するために、就労ビザやその他の在留資格(特定技能・介護ビザ)への切り替えが認められるケースがあります。以下、それぞれの場合の具体的な要件を解説します。

 

(1) 技能実習ビザから直接就労ビザへの変更

 

就労ビザへの変更が認められるためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

 

① 受入企業の実態

監理団体や実習実施機関として、技能実習生の受け入れに特化した事業を行っていること

 

② 技能の伝承と母国貢献

実習で得た技術・知識を基に、後進の指導や技能移転を行い、母国経済の発展に寄与する活動が認められること

 

③ 日本語能力

申請者が日本語能力試験N2相当以上のレベルに達していること

 

④ 業務の充実性

受入企業内で十分な業務量が確保され、単なる実習生時代の作業継続ではなく、指導者としての役割が明確であること

 

⑤ 実習計画の達成

所定の技能実習計画において、到達目標が達成されていること
具体例として、優秀な技能実習生が自社の複数の実習生の技能向上を担当することで、母国への技術伝承が期待できる場合などが挙げられます。ただし、変更申請にあたっては「当初の帰国前提の計画」からの合理的な変更理由が求められる点に注意が必要です。

 

(2) 技能実習ビザから特定技能1号への変更

 

特定技能1号は、在留期間が最長5年間となる点に特徴があります。技能実習で培われた技術を、さらに高度な実務へと発展させることが求められるため、以下の理由から変更が認められています。

 

在留期間の柔軟性 5年間という在留期間は、企業が中長期的な人材育成戦略を描く上で有効である

 

母国経済への還元 在留期間終了後に、実習生が母国においてその技能を活かすことで、国際的な人材交流や経済発展に寄与することが期待される

 

(3) 技能実習ビザから特定技能2号への変更

 

特定技能2号への変更は、主に実習生が日本での実務を通じて高度な技術や知識を習得し、これを母国へ移転する取り組みが重視されるケースです。具体的には、実習期間中に得た技能が国内外で有効活用できると審査基準で認められる場合、変更が許可される傾向があります。

 

(4) 技能実習ビザから介護ビザへの変更

 

介護分野においても、技能実習制度の趣旨に反さない場合、介護ビザへの変更が認められることがあります。この場合、必ず「技能移転にかかる申告書」など、必要書類を整えた上で入管への申請が求められます。介護分野は高齢化が進む日本において需要が増しており、一定の実績や業務内容が認められると、ビザ変更の申請がスムーズに進む可能性があります。

 

まとめと今後の展望

 

ここまで、技能実習ビザから就労ビザ(および特定技能・介護ビザ)への変更が認められるケースと具体的な条件について詳しく解説してきました。主要なポイントは以下の通りです。

 

制度趣旨の理解が基本 技能実習制度は、あくまで母国への技術伝承を目的としているため、帰国前提の在留資格であることを念頭に置く必要があります。

 

例外的事情が鍵 結婚や出産などの身分関係の変化、実習計画上の達成や業務内容の充実性など、特別な事情が認められる場合に限り、就労ビザ変更が検討されます。

 

各ビザの要件を正確に把握する 就労ビザ、特定技能1号・2号、介護ビザそれぞれで求められる条件が異なるため、申請前に自社や個人の状況と照らし合わせた慎重な判断が必要です。

 

専門家への相談が有効 ビザ変更の申請は条件が細かく、書類不備や合理的説明の不足で却下される可能性が高いです。国際業務専門の行政書士事務所といった専門家のアドバイスを受けることで、成功率を向上させることができます。

 

日本では、少子高齢化と労働力不足の問題から、技能実習生の継続雇用を望む企業が増加しており、今後もビザ変更に対するニーズは高まることが予想されます。制度の本来の趣旨を踏まえながらも、実情に沿った柔軟な運用が進む中で、正確な情報と迅速な対応が求められるでしょう

 

まとめ

 

制度の本来の趣旨 技能実習制度は、日本での技能や知識を習得し、帰国後に母国で活かすことを目的としています。

 

変更が認められるのは例外的な事情の場合のみ 身分関係の成立や出国準備、実習計画の達成など、合理的な変更理由が必要です。

 

各ビザごとの要件を正確に把握することが重要 就労ビザ、特定技能、介護ビザなど、申請条件はそれぞれ異なるため、事前の確認が必須です。

 

専門家への相談で申請成功率アップ 複雑な手続きや書類作成については、国際業務に精通した行政書士事務所のサポートが有効です。

 

今後も変化する入管行政の動向に注視しながら、最新情報を取り入れた対策を講じることで、企業様および技能実習生の方々が適切な在留資格変更を実現できる環境作りが期待されます。

 

この他にも、具体的な事例や各種ビザの詳細な要件、実際の申請手続きの流れについてさらに深堀りした情報が必要な場合は、どんどんご質問ください。さらなる実例や最新動向についてもお伝えできますので、お気軽にご相談いただければと思います。