在留資格「永住者」の概要






永住権とは?永住権の要件と申請の注意点を行政書士が徹底解説




 

 

 

目次

 

     

  1. 1. 永住権とは?
  2.  

  3. 2. 永住権の原則的な要件
  4.  

  5. 3. 永住権の特例的な要件
  6.  

  7. 4. 永住権取得のメリット
  8.  

  9. 5. 永住権申請時の注意点
  10.  

  11. まとめ
  12.  

 

 

 

1. 永住権とは?


永住権とは、安定的かつ長期的に日本に滞在できる在留資格の一つで、いわゆる「日本に住み続ける権利」を意味します。永住権を取得した外国人は、無期限に日本で生活できるほか、就労制限もなく、さまざまな活動に挑戦できるという大きなメリットがあります。

一方で、日常会話の中では「永住ビザ」という呼称が使われることもありますが、正確には「永住権」と呼ぶのが適切です。両者に大きな違いはなく、在留カードに記載される在留資格「永住者」が、事実上の永住権を意味しています。

 

 

 

2. 永住権の原則的な要件


永住権の取得には、入管法第22条第2項および「永住許可に関するガイドライン」に基づく以下の3つの要件が求められます。多くの場合、以下の要件を「素行善良要件」「独立生計要件」「国益適合要件」と呼び分けています。

 

 

(1)素行善良要件


素行善良要件とは、法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活を送っていることを示すものです。
具体例としては、以下の点が挙げられます。

 

     

  • 日本の法律に違反して懲役、禁錮、または罰金刑を受けていない
  •  

  • 過去に重複した交通違反など、度重なる法令違反がない
  •  

  • 資格外活動の許可を受けた場合でも、適切な範囲内での就労や生活を送っている
  •  

 

 

(2)独立生計要件


独立生計要件とは、申請者または同居家族の収入や資産、さらには技能により、将来的にも自立した生活が営めることを示すものです。
入管では、具体的な数値基準は示されていないものの、一般的には以下の目安が参考とされています。

 

     

  • 2人世帯で約300万円以上、3人世帯で350万円以上、4人世帯で400万円以上の年収
  •  

  • 直近5年間の収入状況が重視され、同居家族の収入も合算して審査される
  •  

 

 

(3)国益適合要件


国益適合要件とは、申請者が永住することにより日本にとってプラスとなるかどうかが判断されます。
その中で特に重視されるのは、以下の点です。

 

     

  • 原則として、引き続き10年以上日本に在留していること(直近5年間は就労または居住資格で在留中であること)
  •  

  • 納税や公的年金、医療保険などの公的義務を適正に履行していること
  •  

  • 現在の在留資格が、日本の入管法に定める最長在留期間内であること
  •  

  • 公衆衛生上問題がなく、日本社会に悪影響を及ぼさない生活を送っていること
  •  

 

 

 

3. 永住権の特例的な要件


永住権の原則的な要件は基本的に10年以上の連続在留が求められますが、特定の場合にはこの期間が短縮される特例措置も存在します。

 

     


  • 日本人、永住者、特別永住者の配偶者またはその実子:
    実体ある婚姻生活が3年以上継続し、引き続き1年以上日本に在留していれば、永住申請が可能となります。
  •  


  • 在留資格が定住者の方:
    定住者としての在留資格で日本に5年以上滞在していれば、永住権の要件を満たすものとされます。
    ※「日本人の配偶者等」から定住者への資格変更後、合算して5年以上在留していれば対象になるケースもあります。
  •  


  • 難民認定を受けた方:
    難民認定後5年以上日本に滞在していれば、特例として永住権の取得が認められる場合があります。
  •  


  • 特定分野や地域での貢献が認められる方:
    科学技術や高等教育、または特定区域内での貢献活動により、日本への利益が認められれば永住権の特例措置が適用されることがあります。
  •  


  • 高度専門職のポイント制度:
    高度人材として、ポイント計算により70点以上または80点以上の要件を満たした場合、それぞれ一定の在留期間後に永住権申請が認められます。
  •  

 

 

 

4. 永住権取得のメリット


永住権を取得することにより、以下のようなメリットが享受できます。

 

     

  • 在留期間更新の手間が不要:
    定期的な在留期間更新申請が不要になり、安定した生活基盤が築けます。ただし、7年ごとの在留カードの顔写真更新は必要です。
  •  

  • 職業選択の自由度が向上:
    就労制限がなくなるため、転職や起業、副業など多様な働き方が可能となります。
  •  

  • 社会的信用の向上:
    永住者として金融機関や賃貸契約において有利な評価が得られやすく、住宅ローンや各種融資の審査でプラスに働きます。
  •  

  • 家族の在留手続きがスムーズ:
    配偶者や子どもなど、家族の在留資格申請、更新において安定性が高まります。
  •  

  • 長期日本滞在の安心感:
    再入国許可の手続きを適切に行えば、長期間日本国外への出国後も日本への帰国が容易となります。
  •  

 

 

 

5. 永住権申請時の注意点


永住権の申請にあたっては、以下の点に十分注意する必要があります。

 

     


  1. 申請時期:

    永住権の原則要件を満たすには10年以上の在留が必要ですが、実務上は提出期限の約2か月前(例:10年到来の約2か月前)を目安に申請が可能です。

    また、現在お持ちの在留カードの期限が近い場合は、永住権申請前に更新手続きを済ませる必要があります。
  2.  


  3. 身元保証人:

    永住権申請時には身元保証書の提出が必要です。保証人は日本人または既に永住権を有する外国人(特別永住者を含む)で、できるだけ就労中など安定した生活基盤がある方が望ましいです。
  4.  


  5. 交通違反などの過去の行動:

    素行善良要件の審査では、たとえ軽微な交通違反であっても、直近3年間の違反点数が高い場合は評価が下がる恐れがあります。目安として6点以下が求められる場合もありますので、運転記録証明書などで確認することをおすすめします。
  6.  


  7. 社会保険料等の公的義務:

    納税や社会保険、年金などの公的義務の履行状況は国益適合要件で重視されます。個人事業主や転職後などは支払い遅れや漏れがないか、事前に「社会保険料納入証明書」などで確認しましょう。
  8.  

 

 

 

まとめ


永住権は、日本に無期限で滞在し、働く自由度や社会的信用を大幅に向上させる在留資格です。

ただし、申請には「素行善良要件」「独立生計要件」「国益適合要件」という基本要件のほか、特例的な措置が適用できる場合もあり、各要件を十分に理解した上で、正確な書類の準備が求められます。

申請時期や身元保証人、交通違反や公的義務の履行状況など、注意すべき点も多数存在しますので、疑問がある場合は専門家である行政書士に相談し、最適なアドバイスを得ることが重要です。