永住許可の要件






永住許可の要件







 

 


本記事で理解できるポイント:

 

     

  • 永住者在留資格取得に必要な手続きの種類
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  • 他の在留資格から永住者へ変更する際の留意点と要件
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  • 申請ごとに異なる各要件の詳細と具体的条件
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在留資格の変更と永住者資格取得


永住者の在留資格は、基本的には日本入国時に自動的に与えられるものではなく、すでに他の在留資格を有する外国人が変更手続を行うことで取得されます。これは日本に入国する際の初回審査では永住者資格が付与されず、一定の条件下での「変更」手続きが求められているためです。

なお、日本国内で生まれた外国籍の赤ちゃんについては、在留資格変更を経ることなく永住者資格を取得できる特例も存在します。詳しくは「『日本で生まれた子ども』の永住許可」にてご確認いただけます。

 

 

 

永住許可要件の詳細

 

申請者の属性に応じた要件の違い


永住許可の申請にあたっては、入管法22条に基づく以下の3つの基本要件が設定されています。しかし、申請者の地位によっては、全てを満たす必要がないケースもあります。

 

     


  • 日本人、永住者、特別永住者の配偶者・子(養子含む):国益適合要件のみ
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  • 難民認定を受けた者:素行善良要件と国益適合要件
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  • その他の場合:素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件の全て
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※なお、「留学」や「技能実習」の在留資格のままでは変更が認められない実例もあり、また難民認定はごく一部の事例に留まっているため、各自の状況に応じた注意が必要です。

 

 

永住許可の3大要件

 

 

1. 素行善良要件


素行善良要件は、法律を遵守し、住民として地域社会で非難されることのない生活を送っているかを判断する基準です。具体的には、以下の点が重視されます。

 

     


  • 日本の法律に違反し、重い刑罰(懲役、禁錮、または罰金)を受けた履歴がないこと。ただし、一定期間経過後には例外となる場合もあります。
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  • 少年法に基づく保護処分が継続中でないこと。
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  • 日常生活や社会生活の中で、繰り返し違法行為や迷惑行為により地域社会に悪影響を及ぼしていないこと。たとえば、故意の交通違反(飲酒運転、無免許運転、過度なスピード違反)や、窃盗の前歴は判断の対象となります。
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2. 独立生計要件


独立生計要件は、申請者が自らまたは家族単位で公共負担に頼らず、安定した生活を継続できるかどうかを確認するものです。具体的には、以下の条件が含まれます。

 

     

  • 生活保護など公的扶助に依存していないこと。
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  • 自立した収入や資産があり、今後も安定した生活基盤が保たれること。例えば、就労資格を有する場合は年収が概ね300万円以上であることが目安となるケースもあります。
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3. 国益適合要件


国益適合要件は、外国人が日本で永住することにより、社会に利益をもたらす一方で不要な負担とならないかを評価するものです。実際、以下の複数の条件(a~g)によって判断されます。

 

     


  • a. 日本継続在留要件:原則として、10年以上日本に在留しており、そのうち5年以上は就労または居住資格による在留実績が必要です。なお、留学や技能実習から転換した場合は、就労または居住資格へ変更後に連続5年以上の在留が必須となります。
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  • b. 公的義務の履行:各種税金、健康保険、年金などの公的な義務を適切に納付していること。
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  • c. 在留資格の在留期間:現在有している在留資格の中で、最長の在留期間が認められていること。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の場合、5年の在留期間が付与される実績が必要です。
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  • d. 公衆衛生上の安全性:感染症や違法薬物による健康リスクなど、公衆衛生に有害な状態でないこと。
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  • e. 公益への悪影響がないこと:社会秩序を著しく乱す行為や、刑事罰に処せられるような事実がないこと(ただし、例外措置が認められる場合もあります)。
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  • f. 特別許可取得の場合の在留条件:

    • 再入国許可の期限切れなどで上陸特別許可を受けた者は、受領日以降1年以上連続して在留していること。
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    • また、在留期間更新の手続きに遅延等があった場合も、特別に在留を認める資格審査上、同様に1年以上継続していることが必要です。
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  • g. 公共負担とならないこと:将来的に日本社会に過大な公共負担を与えないと判断されること。
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まとめ


永住許可は、外国人が日本で期間の制限なく安定した生活を送るための強力な権利です。その取得には、他の在留資格からの変更手続きを踏まえ、素行善良要件、独立生計要件、そして国益適合要件という3大条件をクリアする必要があります。各要件は申請者の立場に応じて柔軟に評価されつつも、厳格な基準が設けられているため、十分な準備と正確な書類の整備が求められます。

本記事が、永住者資格への変更手続きや永住許可申請の各条件についての理解を深め、今後の申請に役立つ一助となれば幸いです。