在留資格「経営・管理」の概要

■はじめに

 

「経営管理ビザってどんなビザ?」と疑問に思い、また「日本で自分の会社を経営したい」と考える外国人起業家は決して少なくありません。雇われる働き方ではなく、飲食店開業やオリジナルビジネスの運営を望むあなたへ、本記事は経営管理ビザの概要から申請プロセス、必要書類、そして不許可時の対応策まで、網羅的に解説します。ぜひ最後まで読み進め、申請のイメージを確実なものにしてください。

 

■I.経営管理ビザとは何か

 

経営管理ビザは、外国人が日本国内で独自に企業を運営または経営活動に携わるために必要な在留資格です。入国管理法の規定では「貿易その他の事業の経営や当該事業の管理に従事する活動」を行うための資格として定義され、在留期間は最短3~4ヶ月から、1年、3年、さらには5年まで設定されています。たとえば、既に就労ビザや留学ビザを保持している場合、事業を開始するためには在留資格の変更が求められます。

 

■II.経営管理ビザ取得への必要条件

 

経営管理ビザの審査は他の在留資格と比べると厳格です。以下の各条件を確実にクリアすることが求められます。

 

1. 事業所または店舗の確保

 日本国内に実際の事務所や店舗が存在し、営業準備が整っている必要があります。たとえば、内装完了、必要な設備(パソコン、デスク、コピー機等)の配置、飲食店であればメニュー表や厨房設備が整っている状態でなければなりません。

 

2. 資本金または従業員数による事業規模の証明

 

 事業規模の目安として、従業員2人未満の場合は500万円以上の資本金、従業員が2人以上の場合はおおよそ300万円以上が必要です。特に初めて起業する場合、留学生や若年層の場合、または女性経営者の場合は、資金の出所に関する厳重な審査が行われるため、貯金通帳や送金履歴、借用書などで明確な根拠を示すことが重要です。

 

3. 営業許可や各種届出の完了

 業種によっては、飲食店の食品営業許可、不動産業の宅地建物取引業免許、旅行業の登録など、所定の営業許可が必要となります。また、税務署への各種届出(法人設立届、給与支払事務所等の開設届など)も必須です。各自治体や関係機関の指示に従い、手続きを漏れなく完了させることが求められます。

 

4. 事業計画書による企業の安定性・継続性の証明

 経営管理ビザ申請においては、事業計画書が最も重要な書類となります。ビジネスの実態、今後の収支計画、組織体制、集客戦略などをA4用紙7~10枚程度にまとめ、赤字経営やペーパーカンパニーではないことを厳密に示す必要があります。入国管理局は、十分な説明と立証がなされるかどうかを重視します。

 

■III.なぜ経営管理ビザの取得は難しいのか

経営管理ビザの審査が厳しい理由は大きく分けて2点あります。

 

1. 書類の立証と説明の煩雑さ

 単に必要書類を提出するだけではなく、資本金の出所、事務所の実態、そして事業計画書に記載するビジネスモデルや進捗状況について、具体的に説明し、証拠書類で立証する必要があります。必要書類の選別や、細部にわたる説明が求められるため、初めての人には難関と言えるでしょう。

 

2. 申請者自身が要件を十分に理解していないリスク

 「日本国内に事務所がある」という条件は一見シンプルですが、例えば自宅兼事務所の場合、住居と別の営業用スペースとみなされないリスクがあります。バーチャルオフィスやシェアオフィスでの申請は、区画や契約内容が不明確な場合が多く、要件を満たしていないと判断されやすいのです。こうした細かな規定の見落としにより、申請前から審査落ちしてしまう可能性が高まります。

 

■IV.提出が求められる書類の全体像

 

経営管理ビザ申請には、個人と会社双方に関する書類の提出が必要です。

 

【個人に関する書類】

 

・在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
・最近撮影された証明写真(縦4cm×横3cm)
・パスポートのコピー、在留カード(該当する場合)
・大学卒業証書または卒業証明書(必要な場合)
・日本語能力を示す書類(日本語能力試験の合格証など)
・申請理由書
・出資金の形成過程を示す書類(出資の場合)

 

【会社に関する書類】

 

・詳細な事業計画書および損益計画書
・登記事項証明書、定款のコピー
・資本金や年間投資額の出所説明書
・株主名簿、取締役の報酬決定議事録、銀行通帳のコピー
・設立時の議事録、就任承諾書、会社案内もしくはHPの資料
・オフィス賃貸借契約書、給与支払事務所開設届出書、その他税務署対応書類

 

なお、すべての書類は日本語で作成する必要があり、外国語文書には正式な翻訳文を添付することが求められます。

 

■V.経営管理ビザ申請までのプロセスと会社設立の流れ

 

経営管理ビザは、すでに法人が設立された状態で初めて申請可能です。ここでは新たに株式会社を設立し、ビザ申請に至るまでの一般的な流れを説明します。

 

【STEP1】 株式会社の基本事項の決定

 会社名、住所(実際に事務所や店舗を確保)、事業目的、発起人の出資額、役員構成など基本事項を決定します。住所については自宅と事務所を明確に分けるか、独立の賃貸物件を借りる必要があります。

 

【STEP2】 定款の作成

 会社運営の基本となる定款を、自作または専門家(行政書士、公認会計士など)のサポートを得ながら作成します。社名、所在地、事業内容、資本金額、役員体制、決算期などを具体的に記載します。

 

【STEP3】 公証役場における定款の認証

 作成した定款を公証役場で認証してもらいます。電子定款であれば費用が無料の場合もありますが、通常の認証では印紙税(約40,000円)が必要となります。

 

【STEP4】 資本金の振込み完了

 発起人の個人口座(日本国内の銀行口座)に資金を振り込み、定款認証後にその手続きを完了させます。海外銀行支店も条件を満たせば利用可能です。

 

【STEP5】 法務局での法人設立登記申請

 法務局で法人登記と会社代表印の登録を行います。登録免許税は資本金額の0.7%、最低でも15万円が必要です。

 

【STEP6】 税務署および各関係機関への届出

 法人設立届、給与支払事務所等の開設届、源泉所得税の納期特例承認申請等を、管轄の税務署に提出します。控えは後のビザ申請時に重要な書類となるため、必ず保管してください。

 

【STEP7】 業種に応じた営業許可の取得

 

 飲食業、不動産業、旅行業など、必要な場合は各種営業許可(例:飲食店営業許可、宅地建物取引業免許など)を取得します。各自治体や関係官庁へ問い合わせ、手続きを進めましょう。

 

【STEP8】 入国管理局へのビザ申請

 上記のすべての準備を完了したら、必要書類を揃えて入国管理局へ経営管理ビザの申請を行います。費用や準備にかかる時間を十分に考慮し、万全の体制で臨むことが重要です。

 

■VI.申請が不許可となった場合の対応策

 

万が一、審査に通らなかった場合でも、以下のステップで次の対応を考えることができます。

 

1. 不許可理由の確認

 入国管理局の担当官と面談し、具体的な不許可理由を確認します。この際、感情的な抗議は避け、建設的な話し合いを心がけることが大切です。日本語に自信がない場合や詳細な説明が難しい場合は、専門家の同行が推奨されます。

 

2. 再申請時の改善

 

 過去の申請内容を見直し、書類の不備や説明不足、要件の認識不足を次回に生かして内容を大幅に見直すことが求められます。同じ書類内容での再申請では再度不許可となるリスクが高いため、状況を根本から再検討する必要があります。

 

■VII.専門家(行政書士)の力を借りるべき理由

 

経営管理ビザの取得手続きは、充実した書類作成と詳細な説明が求められるため、プロのサポートが不可欠です。多くの場合、自力での申請は手続きの遅延や不許可につながるリスクが高く、最初から専門の行政書士に依頼した方が結果としてスムーズに進みます。特に、事業開始後の多額の出資や賃借契約を前に、ビザが下りない場合の損害は大きいため、信頼できる専門家によるサポートが成功のカギとなります。

 

■VIII.行政書士の選び方のポイント

 

行政書士を選ぶ際は、以下の点に注意し、信頼と実績に裏打ちされたパートナーを見極めましょう。

 

・実績確認

 過去の経営管理ビザ申請実績や専門知識の有無を、事務所のホームページや口コミで確認する。実績が豊富な行政書士は、申請の成功率が高い傾向にあります。

 

・親身な対応

 あなたの状況や事業内容を十分に聞き取り、カスタマイズした申請プランを提案してくれるかどうか。無料相談などを通じて、十分なコミュニケーションが取れるか確認しましょう。

 

・信頼性と長期的パートナーシップ

 申請審査が終了するまで数ヶ月、場合によっては一年以上かかることもあるため、安心して任せられる信頼関係が築けるかが重要です。将来的な企業運営においても相談できるパートナーであれば、より有益です。

 

■まとめ

 

本記事では、経営管理ビザの基本概念、取得するための具体的条件、必要書類、会社設立からビザ申請までの一連の流れ、不許可の場合の対応策、さらには行政書士などの専門家の活用法と選び方について詳しく解説しました。日本で起業を目指す外国人にとって、経営管理ビザは単なる在留資格以上の意味を持ち、ビジネスの安定性・信頼性を証明する鍵となります。各条件や提出書類、さらには審査における注意点を正確に把握し、専門家と連携することで、成功への道がひらけるでしょう。ぜひこの記事を参考に、安心して日本での起業に挑戦してください。

 

行政書士江坂国際法務事務所