
日本で外国人が株式会社を立ち上げる場合、一般の株式会社設立手続きと大筋は同じですが、役員が全員国内在住か、海外居住者が混じるかで必要書類や手続きの期間が大きく変わります。この記事では、各ステップごとの流れや必要書類、また設立後に求められる各種届出まで、全体像を詳しく解説します。なお、案件によっては追加の手続きが必要となる手法もあるため、最終的な手続き前に専門家への相談をおすすめします。
役員全員が日本国内に住んでいれば、国際郵便での書類送付が不要なため、手続きは迅速に進み、概ね2週間前後で株式会社の設立が完了します。
<必要書類>
・日本の市区町村が発行する印鑑証明書(2通)
・個人の実印
・これから作る会社の実印
代表取締役を含む役員の中に海外在住者がいる場合は、国際郵便での書類のやり取りが必須となるため、手続きが長引き、概ね1か月程度が必要となります。国籍ごとに必要な書類も異なり、
<必要書類例>
・本国発行のサイン証明書+翻訳文
また、日本在住の役員については、国籍を問わず日本の印鑑証明書が求められ、新会社の実印も必ず必要です。
株式会社設立は複数の段階に分かれています。以下の各ステップを着実に進めることが、スムーズな設立の鍵となります。
まず、会社名(商号)、会社住所、事業目的、発起人(株主)、各自の出資額、そして役員構成などの基本事項を決定します。特に会社住所の確定は重要で、オフィス賃貸か自宅を一時的に利用するかの選択が必要です。
会社の運営の根幹となる定款を作成します。決定済みの基本事項を盛り込んだ約4~5ページの文書を、ワードなどのソフトで作成します。作成後は、専門家がチェックする場合が多く、次の認証手続きへと進みます。
※定款は、社名、所在地、事業目的、資本金、役員構成、決算期などを明確に記載する重要書類です。
定款作成後、必ず公証役場で正式な認証を受けなければなりません。近年は、行政書士が電子定款を利用してPDFに変換し電子署名を施す方法が一般的です。これにより、通常必要な印紙税40,000円が免除されるメリットもあります。なお、自身で従来の方法で認証する場合、追加費用が発生します。
定款の認証が完了した後、発起人の個人口座(日本国内の銀行口座)に資本金の振込みを行います。海外銀行の日本支店口座も利用可能ですが、来日せずに銀行口座を開設することは現実的には難しいため、国内に一時的な協力者が必要となる場面もあります。振込の証明書(払込証明書)は、当事務所が用意することが多いです。
提携している司法書士が登記申請書類一式を作成し、法務局に法人設立登記および会社代表印の登録を行います。登記申請日が会社設立日となり、通常はその後約1週間で登記事項証明書(登記簿謄本)が発行されます。登録免許税として15万円(または資本金に対する一定の割合)が必要です。
法人設立後、管轄の税務署へ法人設立届、給与支払事務所等の開設届、源泉徴収の納期特例承認申請書など、必要な税務届出を行います。これらの控えは、後に経営管理ビザ申請時にも添付書類として活用されます。
事業内容によっては、古物商許可、免税店、人材紹介業、旅行業、不動産業、建設業など特定の許認可が必要となります。対象業種の場合、経営管理ビザ申請前にあらかじめこれらの許認可を取得しておく必要があります。
すべての準備が整った後、入国管理局に対して在留資格申請書、事業計画書、およびその他の証明書類を揃え、経営管理ビザの申請を行います。すべての書類に不備がないか、十分な立証ができるかに留意し、万全の体制で提出することが重要です。
法令に基づいて、社会保険、労働保険、年金、雇用保険などの各種届出も必要となる場合があります。これらは経営管理ビザの観点から必須ではありませんが、企業運営上大切な手続きです。
会社名を決定する際は、法律上「株式会社」という文字を必ず含めなければなりません。表記位置に関しては自由度が高いものの、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、数字、そして一部の記号(&、‘、,、-、.など)が利用可能です。ただし、中国語の簡体字・繁体字やハングル文字は使用できません。また、定款に記載する事業目的は具体的かつ明確で、将来的に実施する予定の事業も事前に記載できますが、後日修正する場合には追加費用が発生するため十分に検討してください。さらに、株式譲渡制限の条項についても、株主構成の安定性を考慮して設定することが望ましいです。
株式会社設立時には、公証役場での定款認証費用(紙の場合は収入印紙代が必要ですが、電子定款ならその分の費用は免除されます)、法務局への登録免許税(概ね15万円または資本金に基づく金額)が主な実費となります。加えて、書類作成、提携先司法書士および行政書士への依頼費用が発生します。専門のサポートを利用することで、全体の費用や手続きの手間を軽減できるメリットがあります。
外国人1人での株式会社設立は、日本で定款の認証や法人登記、銀行口座の開設など、現地での手続きが求められるため現実的には難しいとされています。しかし、役員として一時的に来日可能な協力者が存在すれば、来日不要で手続きを進められるケースもあります。さらに、当事務所のような専門サービスを利用することで、必要な手続きを代行し、来日負担を軽減することも可能です。
株式会社設立にあたって、取締役が1名の場合と複数の場合とで必要な書類は若干異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。
【設立時に必要な主な書類例】
― 定款
― 払込証明書
― 登記申請書(または取締役決議書・就任承諾書などの補助書類)
― OCR用紙および印鑑届
設立後は、税務署への法人設立届、給与支払事務所等の開設届出書、源泉徴収の納期特例承認申請書、青色申告の承認申請書、棚卸資産の評価方法の届出など、都道府県税、市区町村役場、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークへの各種届出も行う必要があります。これらの控えは、後の経営管理ビザ申請時にも大変重要です。
本記事の内容は、専門の行政書士事務所および登記・法務のプロフェッショナルが監修し、最新の情報に基づいて作成されています。信頼性の高い情報としてご活用ください。
今回の記事では、外国人が日本で株式会社を設立するための基本事項から、役員の在住状況による書類の違い、定款作成から法人登記、さらには経営管理ビザの申請までの一連の流れをご紹介しました。会社名や定款、必要書類の留意点、設立にかかる実費、そして来日不要での設立が可能なケースなど、各ステップで注意すべき点をしっかり把握することが、スムーズな株式会社設立には必須です。専門家のサポートを上手に活用し、確かな準備と計画で起業への一歩を踏み出してください。
最新の法改正や各自治体ごとの手続きの詳細、銀行口座開設の最新事情なども影響するため、定期的に公式サイトや専門家の意見をチェックすることをおすすめします。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、電子定款やオンライン登記手続きの活用が進んでおり、費用削減や手続きのスピードアップにもつながっています。これらの情報も合わせて検討することで、より効果的な会社設立への準備が行えるでしょう。