■はじめに
「経営管理ビザってどんなビザ?」と疑問に思い、また「日本で自分の会社を経営したい」と考える外国人起業家は決して少なくありません。雇われる働き方ではなく、飲食店開業やオリジナルビジネスの
外国人の日本進出―経営管理ビザと500万円資本金の真相
外国人が日本で会社を設立し、本格的なビジネスを展開する場合、必要不可欠な要件のひとつが「経営管理ビザ」です。かつては「申請時に500万円の資本金が必要」と聞かれることもありましたが、法改正を経てその要件は大幅に変わりました。本記事では、最新の入管法改正の背景を踏まえながら、経営管理ビザ取得における資本金の扱いとその他の重要なポイントを詳しく解説します。
経営管理ビザと資本金500万円の誤解
かつて、外国人や外国法人が日本で経営活動を行う際には、500万円の資本金が必須とされていました。しかし、2014年に入管法が改正され、2015年4月1日以降はこの資本金の要件が大幅に緩和されました。つまり、500万円が必ずしも必要というわけではなく、事業実態に応じた審査が行われるようになっています。
資本金が500万円未満の場合の取得条件
資本金が500万円に満たない場合でも経営管理ビザの取得は可能ですが、下記の条件をクリアする必要があります:
- 常勤従業員を2名以上雇用すること
- 雇用する従業員は日本国籍者、永住者、日本人の配偶者、または定住者の在留資格を有すること
- 対象者が労災保険や雇用保険などの労働保険に加入していること
実際のスタートアップ企業においては、初期段階で常勤スタッフを2名以上確保するのは困難であるため、実務上は十分な資本金の用意が望ましい選択となります。
資本金の出所確認と必要書類
経営管理ビザ申請時には、資本金の「出所」について詳細な説明が求められます。不透明な資金調達(いわゆる「見せ金」)やマネーロンダリングの疑念を避けるため、合法的な資金調達の証明が必須となります。具体的には、以下の書類などが有効です:
- 所得証明書
- 海外送金に関する通知はがき
- 税関での携行品・別送品申告書
- 金銭消費貸借契約書
- 本国の通帳のコピー
これらの資料を整えることで、入管審査において資金の出所を明確に証明できます。
海外からの送金と注意事項
海外から資本金を送金する場合、いくつかの注意が必要です。日本に100万円以上の現金を持ち込む際は、必ず税関で申告を行い、その証明書を取得する必要があります。また、為替レートの変動により実際の受取金額が目標額に達しない場合や、年間送金額の上限(概ね5万ドル程度)に留意する必要があります。特に、中国など人民元の取扱いに制限のある国からの場合は、事前に最新の規定を確認することが重要です。
借入金による資本金調達の可能性
500万円の資本金を自前で用意することが難しい場合、借入金を利用して準備する方法もあります。ただし、融資契約書など、借入の事実や契約内容を示す証拠を提出する必要があるほか、今後の返済計画が明確であること、さらには借入先の資金出所に対する説明も求められる点に注意が必要です。
複数取得の場合の企業内での対応
一つの企業内で複数の外国人が経営管理ビザを申請し取得する場合、各自の業務内容や管理業務の割合、報酬体系などが合理的であることが求められます。単に役職名を持つのではなく、実際に事業運営に深く関与していることが審査のポイントとなるため、具体的な業務分担や報酬設定について、事前にしっかりとした準備が必要です。
友人・家族の会社での参画による申請
友人や家族の経営する会社に参画する場合でも、単なる名義上の参加ではなく、事業の運営や意思決定に実質的に関与していることが審査の際に評価されます。代表取締役等の肩書きだけではなく、実務上の役割が明確であれば、経営管理ビザの取得が認められるケースもあります。ただし、実務経験が浅いと信憑性が低いと判断される恐れがあるため、詳細な業務内容の説明が不可欠です。
留学生の資本金形成とオーバーワークのリスク
留学中の外国人が資本金500万円の達成を目指して働く場合、労働時間に厳しい制限があるため、違法なまでのオーバーワークに陥るリスクがあります。留学生は本来、週28時間以内の労働制限があり、これを超えると在留資格そのものが危うくなる可能性があるため、事前に「資格外活動許可」を取得するなど、法令を遵守した上での資本金形成が求められます。