退去強制と出国命令

退去強制と出国命令の違い

 

日本国内から外国人が出国する際には、主に「退去強制」と「出国命令」の2つの制度があります。以下では、それぞれの違いについて詳しく解説します。

 

退去強制

 

退去強制とは

 

退去強制 とは、当該外国人の意思に関係なく、一方的・強制的に送還される制度です。

 

特徴

 

身柄の拘束: 退去強制では、当該外国人の身柄が拘束されます。

 

審査のプロセス: 入国審査官、特別審査官、法務大臣への異議申し立てと、3回の審査を受けることができます。

 

上陸拒否期間: 退去強制手続きにより出国させられた者は、5年から10年間は再び入国することができません。

 

出国命令

 

出国命令とは

 

出国命令 とは、当該外国人のある程度自由な意思により、自発的に出国する制度です。

 

特徴

 

身柄の拘束なし: 出国命令では、当該外国人の身柄は拘束されません。

 

審査のプロセスなし: 退去強制のような複雑な審査プロセスはありません。

 

上陸拒否期間: 出国命令により出国した者は、1年間は再び入国することができません。

 

出国命令の要件

 

出国命令制度を利用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

 

超過滞在(オーバーステイ)であること

 

上陸審査を経ないで入国した不法入国、密入国、偽造旅券での入国は対象外です。

 

速やかに日本から出国する意思を持って自ら入管当局に出頭したこと

 

収容された場合や、不法残留により逮捕された場合には適用されません。

 

入管法24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号または9号のいずれにも該当しないこと

 

資格外活動が発覚した場合や、超過滞在以外の退去強制事由に該当する場合は対象外です。

 

日本に入国した後に刑法犯やその他の法律により懲役または禁錮に処せられていないこと

 

ほぼすべての刑法犯、およびいわゆるピッキング防止法により懲役または禁錮の有罪判決を受けた場合は対象外です。

 

過去に退去強制されていないこと、出国命令により出国したことがないこと

 

速やかに出国することが確実に見込まれること

 

出国命令が出された場合、出国までの期限は15日となっています。この期間内に確実に出国できる場合のみ対象となります。

 

まとめ

 

以上のように、退去強制と出国命令にはそれぞれ明確な違いがあります。退去強制は外国人の意思に関係なく一方的に送還される制度であり、身柄の拘束や再入国制限が厳しいのが特徴です。一方、出国命令は外国人が自発的に出国する制度であり、身柄の拘束がなく、再入国制限も比較的短いです。しかし、出国命令には特定の要件を満たす必要があります。適用条件や手続きについて詳しく理解しておくことが重要です。
行政書士江坂国際法務事務所